2009年11月09日

音もなく、“それ”は降り続けていた

いつの間にか彷徨っていた
丘もない谷もない、森もない泉もない
不毛の大地
昼は照りつける太陽から逃れる術もなく
夜は凍える大地に身を寄せて
渇いていた、ぜんたいに

風が吹いたのは昨晩のこと
<どれくらいの間、吹かなかったろうか>
まともに受けて、寒さと痛みに耐え忍んだ
風が運んでいった霞の向こうに太陽が、夜明け
―大地を照らし始めた

遥か遠い記憶の彼方にあったもの
輝く丘に寄り添って
暗い谷に横たわり
ささやく森に踊り歌い
湧き出す泉に渇きを癒し

音もなく降り続け
気付かぬうちに不毛の大地を彷徨わせていた
霞が地平線の彼方、遠ざかる

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2009年11月02日

焦げて焦がれて

忘れられないらんちゃんは、焦げて焦がれて真っ黒くろ
思い出にするりんちゃんは、熟れて熟して真っ赤か
すぐ放り出するんちゃんは、堅く結んで真っ青さお

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2009年10月26日

輪唱の花園

あんなにも簡単にたどり着けたのだった
開け放たれた窓から入る冷たい空気に目覚めた初夏の朝
白みかかってきた空にはまだ明けの明星がぽっつりと
その光の消える時間を惜しむかのように
ふらふらとつっかけを履いて裏の森へと歩いていた
森の下草がこちらこちらと道を開けてくれていた
その誘いのままに奥へ奥へと
突然広がったのは可憐な花が一面に咲く花園
ぼくのひざ小僧ほどの高さ
真っ白な花が釣鐘のようにぶら下がっている
沢蟹が揺れて光るのがよく見える
そんな水が身体を通り抜けていくような香り
ぼくは蝶になったのか
足で踏み倒すことなくその花の上を歩いていた
るらぁぁぁ
思わずぼくは声をあげた
すると花という花が一斉に
るらぁぁぁ、るらぁぁぁ
輪唱となって花園を包み込んだ
そのままゆるゆると足元の花が次第に小さく見えてきて
るらぁぁぁの輪唱はますます強く包み込み
意識が遠のいていった

濡れ縁にぽつりと座っていた
つっかけを履いて冷気に包まれて
明けの明星は青い空に今しも飲み込まれそう
裏の森の下草は分け入るのを拒むように生い茂っていた

ただの一度だけたどり着けた花園
あれは夢だったのかと思いながら朝の喧騒に包まれていった
それ以来ぼくはいわゆる大人になったのだった

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2009年10月12日

“ある”風景

カミキリムシが穴を開け
幾匹も幾匹もが飛んでった
キノコを群生させて
幾秋が過ぎてった
けものが踏み越え、踏み荒らし
風が吹くたび形を崩し
この間の大風で形を失った

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2009年10月05日

ぼくの海

その海を探して歩くのに
特別に素晴らしい靴を、ぼくは要らない
ただ足の裏の感覚を頼りにして
考えのままに歩いてゆけばよいのだから
ぼくの素足の感覚を磨いてくれたのは、だれ?
ひざしの香り、ささやきあう波頭
狭いのに広い、浮かびながら沈む
“こ・と・の・は“が語りかけるその海に
素足で飛び込む

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2009年09月28日

天秤

1sの水と1sの石が釣り合わないこともあるという
10kgの水と1sの石が釣り合うこともあるという
1kgの水と10kgの石が釣り合うこともあるという
そういう天秤にずいぶんと翻弄された
そろそろ手放そうか

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2009年09月23日

わんころろ

「犬がいます、吠えたらごめんなさい」って
数え切れないほど通ったのに
吠えられる前に張り紙がなくなっちゃった

三匹、四匹、五匹つないだ犬おばさん
六匹目はつながれもせず地面に鼻をこすりつけながら
みんなが休んだところで追いついた

きみが立ち上がったから挨拶に行ったのに
角を曲がって横丁二つ目でやっと吠えるのやめた

おじさんは大股で急ぎ足
ちょこちょこ足とゆらゆら尻尾がさようなら

ジロはね、円らな瞳で追って見送ってくれるんだよ
でもね、食べ物をあげちゃいけないんだって
あんまり食べちゃいけないんだって

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2009年09月21日

壁ふたつ

その壁の高さは測れるという
越えるための階段を設計できるという
だけど越えたという人はいないという
越えたと思ったとたんに高くなるという

その壁の高さは測れないという
越えるための階段は設計できないという
だけど越えたという人もいるという
越えたと思ったとたんに壁の前に戻るという

ふたつの壁を
どこにでもあるという、どこにもないという
見つけるものだともいう、見つめるものだともいう
別の壁だともいう、同じ壁だともいう

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2009年09月16日

五風十雨

水を渇望するからこそ根は伸びる。張りを見せる。旺盛に水を吸って地上に花が咲く。なぜ水を渇望するのか。どうすれば水を渇望するのか。地上の花を早く咲かせたいがために、五風十雨以上のものを与えていないか。われわれは多く根腐れを経験している。

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2009年09月14日

刻むということ

ぼくがぼくを全うするということ。このことの意味は、ぼくの肌に、脳に、刻み込まれたもののなかにしかありえない。他人から与えられたもののなかにはありえないのだ。しかしそこに刻まれたものどもは、全宇宙の物語に繋がっている。
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2009年09月09日

毒蛙

昨年の小春のころとそう変らない。変わっているのは、野生の勘なのかとっくに渡ってきているはずの鳥たちが見られないということだけか。そして一昨日から三日間連続の国民の祝日、今日が最終日。自動供給の基本インフラ以外はすべて休止している(果たして休止という言葉が適切かは分からないが)。街の商店街はほとんどシャッターが下りているが、意外に三々五々ぶらつく人々が見かけられる。こんなに穏やかな小春日和。天気も、そして思い思いにその時を待つ人々も。そもそもの騒ぎが起こってから数年。初めは大岩が飛び込んだ湖水のように揺れた人々の心も、今ではすっかり鎮まっている(飛び出すべき人は飛び出した)。
宗派を超えて、その時の一分前から各地の寺や教会が鐘を鳴らし始めることがだれ言うとなく申し合わされていた。そして、とうとうその時を向えて鐘の音が響き始めた。ひとり深呼吸する者、愛し合う者どうしで抱き合う者。手を合わせる者、大地に身体を解放する者。季節はずれの風鈴を持ち出す者、鐘や風鈴の音に耳を澄ます者。それらの人々を強烈な光、そして熱が飲み込んでいった。

西暦20△□年10月某日。この国の制海権を奪われ、海岸地域に先制ミサイル攻撃を受けると某国がその海岸から上陸してきた。時の首相はこれを受けて世界各国に発信した。「本日わが国は某国の侵略を受け、自国民の人権が著しく侵害される事態に陥りました。よって法の定めるところにより、原子炉の時限爆破装置のボタンを押します。このことにより本年11月某日正午、各地の原子炉すべてが爆破いたします。」こうして某国と国際社会が睨み合っている均衡のなか、この国の奇妙な静けさにつつまれた一ヶ月が始まった。

西暦20×○年。泡沫とも言えるある政策グループが低投票率と、ある種の社会の空気によって圧倒的多数をとって政権を樹立させた。そして、その政権は奇天烈な法案を成立させた。要約すると「国家間の紛争により自国民の人権が著しく侵害された場合は、自国内の原子炉すべてを一ヵ月後の正午に時限爆破させる。」というものだった。この法案が成立すると政府は矢継ぎ早に各地の原子炉に時限爆破装置を設置した(電力の供給システム転換は存外に進まず、逆に原子力発電所が各地に多数建設されていた)。それは解除には最新のコンピュータで演算させても数年は解析に時間がかかるロックシステムを採用するという念の入れようだった。国民は動揺して、当初は実力行使して爆破装置を撤去する動きもあった。しかしそれも鎮まって大きく分けて三つの派に分かれた。海外移住派、穏健爆破装置撤去派、そして静観派(と言うべきか)。西暦20△□年までに海外移住派のほとんどは海外移住していた。穏健爆破装置撤去派は海外移住派に転身したり、静観派に転身したり。静観派は自ら変えようとするでもなく、昨日までの生活が永劫続くかのように暮らしてこの時を向えたのだった。

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2009年09月07日

喝采

ガタンゴトンと動輪が線路を通り過ぎ
シャーシャーとタイヤは相も変らず道路を舐めてゆく
ちゅるりちゅるり小鳥の声を
カーとカラスが引き裂いて
ほとぼり冷めたらまたちゅるり
パサリとカレンダーは風に揺れ
カーテンの影はだんまりを決め込んでいる
それらすべて
ぼくの呼吸の音とともにいつくしむということ

―ぼくへの喝采

だからどうか
ぼくの牙は、ぼくの爪は
無用に使わせないでください

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2009年09月02日

道男

急峻な斜面に針で引っ掻いたように一筋
右手は見上げるばかりの岩盤
左手は遥か下から沢の音が聞こえる森
今日も一人の男が道を歩く
脆い岩肌のこと
彼の鼻先を大岩が通り過ぎたり
彼のすぐ背後を土砂が流れて行ったり
だが彼は委細お構いなしに歩き続ける
ただ自分の進むべき道が岩や土砂に塞がれていたり
あるいは崩れていたり
そういう時だけ持っている粗末な道具で
やれやれというように道を補修するのだった
集落のはずれの自分の家から山へと続くその道に
朝の暗いうちから夜も暗くなるまで
来る日も来る日も出掛けるのだった

ごく稀な村人との会話はこんなものだ
どうしておめえはいつもあの道にでかけるだ
いつでも通れるようにしておくためさ
どうしていつでも通れるようにしておくだ
いつでも道を見回りできるようにしておくためさ
なんかおかしな話だな、おめえしか通らない道なのに
おらしか通らないからでかけるだ
いつまででかけるだ
そんなの道に聞いてくれ
やれやれ聞けば聞くほど分からなくなった
いつも村人は呆れて男と別れるのだった

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2009年08月31日

狩人の午睡

吹く風に混じる血の香り
葉ずれはさやさやとささやき
木漏れ日はしずしずと揺れて
四肢は弛緩し瞼も重い午後だというのに

崖の上に逃げられないように
うまく道を遮断して
そう、茨の生えた森に追い込んで
ここまで距離を詰めれば跳躍一つで
背中に爪をかけ、首筋に牙を剥いた
迸り出る熱いもの、口の中に広がって

満腹―――――
なるほど、それははく息に混じっていたのか
背中と首筋にかすかな、イ・タ・ミ
も忘れて再び午睡をむさぼる

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2009年08月26日

斧の日

大地に突っ立つ、きみはだれ
たくさんの実を腕にぶらさげる、きみはだれ
赤、青、黄色、緑や桃色
たくさんの実はそれぞれに光を放って競い合う
赤いきみ、青いきみ、黄色いきみ
きみたちはだれ
緑のきみ、桃色のきみ
ぼくは何色

えい、この樹は失敗だった
だれかが斧を振り上げた

イ・タ・イ
遠のいてゆく意識のなか
聞こえたのはガラス細工の風鈴の音
見えたのは、ぼくら
とは、どこかが違った・・・

(ぼくはだれ)

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2009年08月24日

ぽつぽつぽつ

ぽつぽつぽつ
ぼちぼちぼち
ほらきれい
ぽつぽつぽつ、ぼちぼちぼち
ぽつぽつぽつ、ぼちぼちぼち
えい面倒
ぽつぽつぽつ、ぼちぼち
ぽつぽつぽつ、ぼちぼち
ぽつぽつぽつ、ぼちぼちぼちぼちぼち
ほら
ぽつぽつぽつ、ぼちぼち
ぽつぽつぽつ、ぼちぼち
ぽつぽつぽつ、ぼちぼちぼちぼちぼち
ぽつぽつぽつ、ぼちぼち
ぽつぽつぽつ、ぼちぼち
ぽつぽつぽつ、ぼちぼちぼちぼちぼち
あれ
ぽつぽつぽつ、せっせっせっせっ
ぽつぽつぽつ、せっせっせっせっ
ああ疲れた
ぽつぽつぽつ、ぼちぼち
ぽつぽつぽつ、ぼちぼち
ああ大変
ぽつぽつぽつ、せっせっせっせっせっせっ
ぽつぽつぽつ、せっせっせっせっせっせっ

ぽつぽつぽつが止まらない
せっせっせっせっせっせっを止められない

ぽつぽつ、せっせっせっせっせぇ
ぽつぽつ、せっせっせっせっせぇ
ぽつ、せっせっ
ぽつ、せっせっ
ぽつぽつ、ぜぇぜぇ

ぽつぽつぽつぽつぽつぽつぽつぽつ・・・
・・・・・・・・
‥‥‥‥
∴∴



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2009年08月19日

そして風がどこからか

そおっと息をふきこんで
生まれた生まれた、なにが生まれた
生まれた生まれた、しゃぼん玉生まれた
ふうわりはなれて、ゆれてゆられて
なに見てる、なに思う
笑顔がはじけたその瞬間
ひかりがきえた
ことばがきぇ・

そして風がどこからか

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2009年08月17日

湖に影がどこまでも

夜半の月がひとしずく湖水に落ちて
分散する影はどこまでも遠く
追い続けてもたどり着くことなく
これほどまでに・・・
それだというのに呼吸は乱れを知らず
ただ光にとけていった

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2009年08月12日

それからぼくは始まった

洪水を起こすことも
この世を焼き尽くすこともお手の物
闇を恐れず
光を呼べた

それなのに

ぼくはおこった
なっとうをぶちまけた
あしでけちらして
ふみつけてやった

ごめんなさい、おなかすいたでしょ
おかあさんがやってきた
だいすきな、なっとうごはんだからね
おみせにいってくるからまっててね
そういうなり
ごはんをめのまえにおくと
おかあさんはいってしまった

ぼくはいまおかあさんにだっこしてほしかったのに

ぼくは叩きをもったおかあさんがきらいだった
なにやら怒ったように忙しげに
ぱたぱたぱたぱた

だからぼくはうまい仕返しをかんがえた
叩きをもってたちあがり
けちらしたなっとうをふみつけてやった

かえってきてぼくをみたおかあさんはよろこんでいた
あるいたあるいた、はじめてあるいたと
ぼくはぶっきらぼうに叩きをもって
やたらとなっとうのうえですってんころりんをくりかえしていた

それからぼくは始まった

洪水はだだのおもらし
癇癪を起こしてもこの世はそのまま
闇は恐くなり
光は呼べなくなった

posted by はまべせいや at 17:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 疑問のウラガワ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年08月10日

そよ風横丁を歩いたら

そよ風横丁を吹く風に身をまかせ
フェンスにもたれた枯葉がうたう
カラカラカラカラ
時折風が強くなっても飛ばされることなく
時折風が止んでも上手い具合にフェンスにもたれ
カラカラカラカラ
ぼくはといえば
飽きもせずにそよ風横丁を行ったり来たり
そよ風横丁を照らす日差しが
いっそう枯葉に彩りを加えてく

posted by はまべせいや at 04:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 疑問のウラガワ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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