2005年11月21日

鍋焼(なべやき)

季語本来のさすところは、鍋焼きうどんではないそうである。

もともと食の細い子であった。
それが風邪で寝込んでいるとなおのこと。
何も食べずにただ布団のなかで寝ているだけだった。
こうなると母はもう私に食べさせることはあきらめて
ひたすら暖かくさせて熱を下げることに専念した。

私が子供のころのストーブの天井は非常に熱くなった。
そこの上にやかんに水を入れておいておくと、
沸騰して蒸気をあげるので加湿にもなった。
夜母が帰ってきた気配で目を覚ます。
母がストーブをつけるとそのぼうぼういう音と、
ちんちんとなるやかんの音を聞きながら再び眠りに入っていった。

私の熱が下がってくると母はよく鍋にうどんを作ってくれた。
私はそれでも大抵はすぐに食べない。
作られたうどんはストーブの上、やかんの隣におかれることになる。
そして出かけるときは、
「おなかが空いたらストーブをつけて、うどんを温めて食べな。」
そう言って家をでる。

母がうどんを作るころには少しずつ元気が出てきて、
布団から出て本を読んだりもする。
そしてストーブをつけるのだが、
それでも以前食欲はなくうどんは煮詰められていくことになる。

うどんを作ってもらってから一昼夜ぐらいするとやっと食欲が出てくる。
そのころにはうどんの麺は半分溶けていて、たれそのものの色になっている。
私はそれをおいしいと思いながらぺろりと平らげる。
うどんを平らげればしめたもの。
翌日早く学校に行きたいという思いを抑えて用心のために休むと、
その次の日には元気よく家を飛び出していった。

うどんの麺はつるつる、しこしこ、もちもちが良い。
人は言う。
私もそういううどんを食べておいしいなと思う。
でも私が本当に好きなうどんは、
実はストーブの上で煮つめられてでろでろのうどんなのである。
posted by はまべせいや at 17:44| Comment(4) | TrackBack(0) | 季語に思う | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ストーブとやかんの音と お母さんの気配に
うつらうつら また眠りにつく・・
なんだかとっても 気持ち良さそう。
せいやさんは しんどかったかも知れないけれど^^;

本当に好きな でろでろのうどん、もう何年(何十年?・笑)も
食べていないのでしょう?

その頃に タイムスリップして 少年せいやさんが 眠ってる隙に
ちょこっと 食べることが出来たら 嬉し楽し、ですネ。

目が覚めて 『うどんが減ってる??あれ?; 何故だろう・・?;』って
目ぇぱちくりな 少年せいやさんの姿、
見てみたいとおもいませんか?(笑)

風邪をひいたら 是非、タイムトリップしてみてください^^

風邪ひかないでくださいね・・じゃないのかい?!;(笑)
Posted by うさこ at 2005年11月23日 01:32
そうか。
あの時うどんがなんとなく減っていたように感じたのは
将来の私が食べていたからだったんだ。
数十年来の疑問がこれで一つ解けました。
ありがとう。

風邪のとき読む本は何冊か必ず決まっていて、
海外の童話集や日本のおとぎ話集を何度も飽きずに読み返していました。
普段はなかなか省みないこれらの本を読むのが楽しみで、
学校を休んでも部屋の中で結構いろいろなところを旅して回っていました。
これらの話のほとんどを忘れてしまっているのはちょっとさびしい。
でもきっと心のどこかで生きているんだろうなと思います。

そんな話のなかで、
小僧さんが夜叉の家の屋根裏に一晩泊まったという話があったのを思い出しました。
夜叉が昼見かけた小僧を見つけたら料理してくれようと
包丁を研いでいるその後ろの囲炉裏では、
もちを入れたなべが湯気をたてている。
もちはそれこそ煮詰められてどろどろに溶けている。
小僧さんはわらぶきのわらを何本か抜くと、
それをつなげてなべにつけて、
ちゅうちゅうともちをみんな吸ってしまったという話でした。
全体はどんな話だったかなぁ。
「三枚の御札」のなかの一齣だったかなぁ。

Posted by せいや at 2005年11月23日 06:42

「三枚の御札」は、変な婆さん(笑)が
うおぉぉぉ〜って追っかけて来て、 逃げる時に
1枚目は 山火事を起こして
2枚目は でっかくなってみてって言って
3枚目は んじゃ、小さくなったりは出来ないしょ?
って 使って
「出来るさぁ〜〜」って豆粒位に 小さくなった
鬼ばばぁ(私じゃぁないですよ・笑)を
ぱくりと食べちゃって あ〜助かった。めでたし、めでたし^^
・・・と、いう感じの お話ですよネ。

逃げ出す前に そんなひとこまがあったなんて 知りませんでした。
正確には 私も すっかり忘れてしまっているんでしょうね・・。

私も 子供名作全集(?)のような本が 大好きな子供だったようです。
母の話によると、です。
何時の間にか 生きてくことでいっぱいいっぱいの毎日に突入して
そういう事さえも 忘れていました。

でも・・また最近、 絵の世界にしても 音楽の作り出す世界にしても
いろんな”物語り”に 入っていける時間が
とても心地よく 感じるようになりました。
Posted by うさこ at 2005年11月23日 22:27
「三枚の御札」のなかの話かどうかは定かではありません。
夜叉じゃなくて、盗賊だったかもしれないし。
だからその辺は適当に流しといてくださいね。

先日急に「そうだ千夜一夜物語を読もう」と思い立ちました。
まだ読み始めたばかりですけどこれが面白い。
ストーリーが面白いということもあるけれど、
イスラム圏の人々の考え方の原型のようなものに触れているような気がして、
そんな感じ方をしている自分も面白い。

昔読んだ日本の昔話の一つ一つは忘れているけれど、
子どものころ読んだこれらの話は
きっと今の自分の考え方の原型になっているのかな?
なんてことを確認しています。
Posted by せいや at 2005年11月24日 05:27
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