2010年05月05日

流されて

せせらぎの音、風が木の葉を輝かせて走り過ぎてゆく音。どこかで、あれは雲雀か。ぼくの鼻腔を通る空気の音。甘いようなそれでいて幾分刺激するような芳香に包まれて、大地を背負い、目を閉じる。と、しばらくして。奇妙な浮遊感、そして水しぶき。状況を掴むのに随分手間取った。なんと、これは笹舟―に乗って小川を下っていた。やれやれ、何ということ。笹舟は器用に波の間をすり抜けて泳いでいるけれど、ぼくにはとてもじゃないが小川に飛び込んで無事岸に泳ぎ着ける自信がない。仕方がないか。どこかにたどり着くまで乗っているしかないだろう。そう思って今度は笹舟を背負い、そして空の雲を見た。雲がどんどんと後ろに流れてゆく。どこまで流されてゆくのだろう。だけど雲を見ているのは飽きないなと思っているうちに雲の動きがゆっくりになっていた。えっ、この香りは。まさか潮風。舟からあたりを見渡すと、なんと全方位まん丸な海。水平線と雲以外は何も見えなくなっていた。ああ、どうしたことだ。そう思っていると、一片の雲が見る見るうちに膨らんで、入道雲になったかと思うと雨が降ってきた。舟に水が溜まって沈んでしまう。そう思ったら、せせらぎの音。草の香り。ぼくが大地を背負ったすぐ脇で、山羊が尿を垂れていた。

posted by はまべせいや at 04:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 黒の部屋 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/148785606

この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。