2010年01月13日

二つの招待状

ぼくはパーティーの招待状が入った白い封筒を持って歩いていた。同じような封筒を持った人々と肩を並べて、会場まであと少しでたどり着くというところで出遭った古めかしい黒マントの男。「きみを特別なパーティーに招待しよう」と言って、ぼくに茶色の封筒を無理やり押し付けた。なかに入っていたのは「終わりを知るためのパーティーへの招待状」だった。なんだかあやしい。けれども少し面白そう。白い封筒に入っているのは「幸福になるためのパーティーへの招待状」だった。あやしいのはこちらも同じ。そしてこっちはありきたり。ぼくは白い封筒を捨てると、「終わりを知るためのパーティー」への会場を目指すことにした。けれどもぼくは、いまだに会場にたどり着けないでいる。招待状には、場所はあなたが探してくださいということと、日時はあなたが到着したときですとだけ書いてあるばかり。他には小さな銀色の軽金属の薄い板が入っていた。どういうつもりでこんなものを入れたのか、うすぼけたぼくが映るばかり。招待状は茶色い封筒とともにぼくの胸ポケットでよれよれになって忘れられ、ときどき何気なく胸ポケットに手を突っ込んで金属の板の角で指を突っついて思い出す程度になってしまった(いったい招待状は今なお有効なのか?)。白い封筒のパーティーに行った人々は、それなりの幸福を手に入れたようだ。けれどもただひとつだけ、“終わり”が怖いらしい。ぼくは人々から幸福そうには見えないらしい。けれども“終わり”は怖くない。なぜなら“終わり”がどういうことか、ぼくは知らないのだから。

posted by はまべせいや at 04:24| Comment(0) | TrackBack(0) | 黒の部屋 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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