2009年11月30日

紡がれる“もの”

カラカラカラとどこからともなく
軽く乾いているとも、哀調を帯びてしっとりしているとも
どちらともとれる不思議な音に誘われて
ふと訪れたその村の、工芸記念館に足を踏み入れていた
真っ黒なタールが塗られた木の床の
六畳ほどに区切られた部屋の片隅の
西日の洩れるすりガラスの前に
ぽつねんと置かれていた糸車、ただ佇んで
誘った音がいつの間にか収束したその部屋に
床のぎしぎしいう音と、息遣いだけが妙に響いて
はずみ車を規則的に回す腕と、繊維を導く細やかな指とが
―――紡いでいた
一本の糸となって―――巻き取られる
それは遠い記憶、それは遥かな行く末
あるいは今しも直面した現実
折からの光に茜に輝く紡錘は
祖母や母や娘や孫娘や
(変わったのはなに、変わらないのはなに)
“彼女”のつぶやきをカラカラカラと
今こそ確かに耳にしているのだった

posted by はまべせいや at 04:23| Comment(0) | TrackBack(0) | 疑問のウラガワ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

この記事へのトラックバックURL
http://blog.seesaa.jp/tb/134290194

この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。