2010年07月30日

白芙蓉

足裏は、ぐにゃりぐにゃり
打ち水は、ゆらりゆらり
吹く風は、ぬらりぬらり
白昼にみるゆめ、なのか
青葉に雪が、ふうわりふわり

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2010年07月28日

写し絵

彼女はよく占いをやった。はじめは興味がなかったぼくも、いつのまにか目の前でやる彼女の占いを手伝ったりするようになっていた。
彼女が墨を磨る。その墨を筆の先につけると、水に垂らした。その水面にぼくが紙を張り、水面にできた墨の複雑な模様を写し取る。紙を水面からはがして反転させて、古新聞の上に引き伸ばす。
「あっ、おおいぬよ。」
「あっ、おおぐまだ。」
彼女がつぶやくと同時にぼくもつぶやいた。今まで彼女の見立てに口を挟んだことはなかったが、つい口をついた。はじめて二人で旅行するのにどこが良いかという占いだった。
「これはおおいぬね。しっぽの伸びた感じも、耳が垂れた感じもいぬだわ。だから南の方に行くのがいいわね。」彼女はぼくが言葉を発したことに少し驚いたようだったが、構わぬようにそう言った。
ぼくのつぶやきをまるで無視するかのように言葉を継いだ彼女に少し気に障ったのと、からかってやろうかなという思いが入り混じって、「これはどう見てもおおぐまだよ。がっしりとした前足の感じもそうだし、きみがしっぽに見えると言ってるところも、ほらっお尻の輪郭の一部だよ。だから北の方に行くのがいいな。」ぼくは言った。
「あらっこれはやっぱりおおいぬだわ。それにどうしておおぐまだから北なの。」そう言った彼女の言葉には、ぼくが占いに口を挟んだことが気に障ったのか、語尾に詰問調がこもっていた。
「おおぐま座は北極星を指してるじゃないか。だからおおいぬが現れたということは、きっと北がいいという意味だよ。」彼女の詰問調にあわせて、ぼくも向きになった風にそう答えた。
「あらっおおぐま座なんて夏の暑い盛りの花火大会の花火の合間なんかに見るものだわ。だからおおぐまだから北じゃなくて、おおぐまだから暑いところに行くっていう意味よ。」彼女の言葉に熱が入ってきた。
「へぇきみは、おおいぬじゃなくておおぐまだって認めたんだね。それに、そのうえでおおぐまだから暑いところに行くのがいいなんて屁理屈捏ねて。」ほんとうの気持とは裏腹に、彼女をとにかく言い負かせてやろうという気になってきた。
「あらっ私は仮におおぐまだとしても、暑い南の方がいいと言っただけよ。あくまでもおおいぬだから南なのには変わりないわ。」彼女も後には引けないという感じでそう言った。
「きみの言い方からするとおおいぬだから寒い北の方ということにもならないかい。おおいぬ座は寒い冬の帰り道なんかにぶるぶる震えながら探すものだよ。」ぼくも後には引けない。
「あんまり言いたくはなかったけど。確かみなちゃんも北の方に旅するって言ってたわよね。一日だけフリーで歩き回ってどんな写真が撮れるか競争しようなんて言ってたけど。どんなことがあっても北の方がいいなんて、もしかして何かあるのかなぁ。」彼女の言葉にはトゲが含まれ、そして目には探るような感じが含まれていた。
「何を言い出すんだよ。言っていいことと悪いことがあるぞ。それなら俺も言うけど、きみだってよしおが南の方にアルバイトに行くという話しを熱心に聞いてたし、写真で競う話も乗り気だったじゃないか。きみの結論は、占いなんかしなくても、はじめから南だったんだ。」ぼくは言い放った。
「あらひどいわ、謝って。」
「きみこそ、謝れよ。」
「あなたこそ。」「きみこそ。」
「あなたこそ。」「きみこそ。」
それきり旅行の話は中止となって、二人は不機嫌なまま分かれた。
その後何度か二人で会うこともあったが、会話は通り一遍のことに終始して、会う間隔も次第に長くなり、いつの間にか彼女はぼくでもないよしおでもない、他の男子学生とキャンパスを歩くようになっていた。

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2010年07月26日

はもん

あっ はもん
それ、
はつながっている
のだから
つぎから つぎ
ゆらり ゆらり
かがやきを
みつめてた
ぬくもりを
みつめてた
ほうようを
みつめてた
のに
そのさきは
くらやみ さむかぜ いばらみち
あらしのなか
このは
のように
いまも どこからか
ゆらり ゆらり
そこ、
にあった
それ、
だけをみつめる
のだから
しゅくしゅくと
かがみ
のように
なめらかな
きおくに
かえる

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2010年07月22日

不要な自分

自分のできるようにしかできないということは、自分のできるようにできるということである。この簡単なことに気付くのに、ぼくは案外時間を費やした。このことに気付いたことによってしゃっちょこばった自分は不要となり、ただ全うするだけの自分が訪れた。

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2010年07月21日

風を感じて

吹く風になにかが棲んでいると感じる皮膚感覚は、足の裏でどれだけ大地を感じながら歩いているかということで日々進化もし、退化もする。理性の退化だと人は言うかもしれない。しかしそれは逆だ。感覚を疑い、理性を研ぎ澄ましたからこその逆転現象だ。ぼくの現時点での後半生このかた概ねこの感覚は進化する方向であったことは確かなようだ。吹く風を感じる“とき”は決して流れない。

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2010年07月20日

グラスいっぱいのお話

グラスいっぱいにクラッシュアイス
ちゃりんしゃりん ちゃりんしゃりん
あれだけみんなお話したのに
しまいに無口になっちゃって
空っぽのグラスが残るだけ

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2010年07月17日

秩序の力

丸も四角も三角もあわせて。たくさんの図形の角の数の平均を出したら、たとえば3.27だったとか。それでなにが見えるか、見えなくなるか。その3.27という数字でなにもかもが見えたと勘違いさせる。それが秩序を保つ力だ。

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2010年07月15日

息泥棒

息泥棒というのがいるらしい。

たとえば。
ちょっとした出来事で呼吸を忘れてしまう。
乾いた唇と唇の間からふっと息が吹き出して我に返り。
その後目頭が熱くなったというような。
そんなときの息は高級品。

けれども。
会話に伴う息でも。
黙って活動しているときの息でも。
ため息でも、寝息でも。
どんな息でもかっさらって行くという。

息泥棒はかっさらった息をこねて、なにかをこしらえているらしい。
こしらえたものを適宜使っているともいないとも。
いったいどのように使うのか。
いったいなにを企んでいるか。
現在調査中。

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2010年07月11日

魔物

気配もしないし、匂いもない。だけどあいつは突然ぬっと現れる。がっしりとしたあの前足が突然飛んできて、一撃食らったら大変そうだ。指先には爪が隠されているのが分かる。その爪で何度も掻かれたら次第にこちらの動きが鈍くなるだろう。長く伸びた鋭い牙で、一瞬の隙を突いて首筋にでもこられたらたまらない。それとも爪で引っ掛けて、あのがっしりとした前足で組み敷いて、咽喉笛にがぶりだろうか。いつもあいつの影におびえてびくびくしている。この俺だって案外他の動物からは恐れられているのに。

水のみ場に浮浪狼が一頭。一瞬体が硬直した後、おそるおそる水を飲み始めた。

それにしても、どうしてこいつはいつも恭順のまなざしを送るのだろう。

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2010年07月09日

厚顔な目

現実をあるがままに受け容れるとはどういうことか。それは現実に矛盾や不条理が含まれるというのではなく、現実そのものが矛盾であり不条理であるという認識・態度を持ち続けることではないか。それは簡単なようでいて、社会に生きる人間としては難しい。義憤に駆られて怒っている人々の脇に立ち、涼しい顔をして目の前のことに没頭したり、歓喜に沸き立ち踊り騒いでいる脇で、心ここにあらずという体で佇んだり。そうした行動をすることによって人々から受ける視線を、どこ吹く風と受け流せなければとてもできないのだから。

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2010年07月08日

黒いしみ

目覚めたものの、なんとなく体が重かった。布団の上に再び横たわると、大の字になってまぶたを閉じた。重いまぶたを再度こじ開けたときには、天井のしみがはっきりと見分けられるほど明るくなっていた。スタンドの明かりを頼りに、眠れぬ夜に視線でなぞった見慣れた天井のしみ。その一点に見慣れない真っ黒なしみができていた。そう思ったらそのしみが天井を動き始めた。そして考える間もなくそのしみがこちらに向かって落ちてきた。手で払いのけようとすると、まるであざ笑うかのようにまた天井めがけて帰っていった。ぶぅぅんという音を残して。そうか蝿か。いつの間にか蝿が部屋に入り込んでいたのか。
それにしても重い。まぶたも、頭も、手足も。蝿を払いのけようとして顔を背けて空振りをして、そのままの形で眠っていたようだった。次に目を開けたときは西日が部屋に射していた。オレンジ色に染められた天井に、黒々とあの蝿がまだ止まっていた。えぃ、なんだあいつは。人をあざ笑うみたいに。癇癪を起こして叩いてやろうと立ち上がろうとした、ところが体を支えようとした腕がガクリときてそのまま布団に倒れこんだ。相も変わらず体は重いのだが癇癪を起こしたおかげでどうやら意識が高ぶって目はさえてきた。とは言え夢か現か分からぬ感覚で、手足は相変わらず重いまま。
―ずっと蝿を眺めていた。奴はあれ以来一度も飛ぶことはなく、天井をひとしきり這いずり回ったと思ったら、ずっと動きを止めて。羽をもぞもぞ動かしたり、手足で顔を洗うようなそぶりをしたり。それを眺める以外には、思考も手足も働かなかった。夜の間は目がさえて蝿を眺め、明け方になるとまぶたが重くなり、天井がオレンジ色に染められるころになって目が覚めた。
蝿を眺める夜を何度過ごしたか、外が白み始めてきた。今日は何日だっけ。やっとそんなことに頭が回るようになってきた。枕元のラジオの電源をオンにする。音楽の後にDJの声が入った「今年は空梅雨で、昨夜の七夕も・・・」。そうかするともう8日になるのか・・・8日といえば、なにかあったような・・・。あっ思い出した。彼が帰省する日だ。預かっていた彼のアルバイト代を渡さなければ。
耳の中がもぞもぞした。ぶぅぅんという音。真っ黒な蝿が窓から飛び出していった。唖然として蝿が消えていった窓の方角を凝視していた。そのぼくの耳に入ったのは、「おはようございます。7月5日月曜日午前6時のニュースの時間です。」というラジオからの声。

posted by はまべせいや at 04:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 黒の部屋 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年07月05日

満ちるとき

丸めた銀紙を広げたような
海がゆるゆると揺れている
ちゃぷりちゃぷり
足元の岩に寄せては返し
吹く風は肌になじんで
なつなつと
いつから いつまで
そんな問いをどこか遠くへ吹き流す
この ときを
手の平に撫でながら
やんわりと受け止める
あっ、微熱
じんわりと潮が満ち
潮溜まりから ぽろり
鎖骨には水滴が

posted by はまべせいや at 05:09| Comment(0) | TrackBack(0) | 疑問のウラガワ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年07月01日

登りつめた言葉

「頂まで登りつめた言葉」とはどういう言葉だろう。ぼくは今までにそうした言葉に出会ったという実感がない。ということはそうした言葉はこの世にないのかもしれないし、ぼくのものぐさゆえに出会っていないのかもしれない。あるいはぼくの無知ゆえに出会っても気付いていないのか。
ふと懐かしい香りがして心が揺さぶられた。いつまでも心に留めておきたい香り。だけどその香りが何の香りか説明できない。
どれだけの血を吸ってきたのだろうか。静かに妖しく光る日本刀の光。さっと切り付けられるというのでなく、胸に押し当てられるという感覚。
そうしたような作用をぼくにもたらした言葉というのには出会った記憶はある。もしかしたら、そうした作用をもたらした言葉が「頂まで登りつめた言葉」なのかも知れない。

posted by はまべせいや at 05:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 「K氏」をたどる | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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