2010年06月17日

砂浜遊戯

かき集めた砂山のてっぺんに棒をさして、順番に砂をのけてゆく。
「棒を倒したら負けよ。どうしてもらおうかな。どうしようかな。」
同い年だと言うけど、ぼくより数段大人びたみよちゃんは、不思議な笑みを浮かべてそう言った。
棒を支える砂山が次第に頼りなく、小さくなって、何度目かのぼくの番。
みよちゃんが「ねえ」と言ってぼくの手を押さえた。
視線の先に、砂浜に残された波の跡。
いつの間にか、ふたりの山の近くまで波が迫っていた。
「崩しちゃだめ。」みよちゃんは手を押さえたままつぶやいた。
ふたりは寄せては返す波を横目に、砂の山を見つめた。
動けなかった、話もできなかった。
ざざあん、しゃぁぁ、ざざあん、しゃぁぁという音が、波だけは動いているのだとふたりにささやく。
やがて大きな波が寄せて、砂山が海に浮かんだ孤島のように波に囲まれた。
そして、ふたりの膝と手を洗って返していった。
砂山は無事だった。
次に大きな波が寄せたときは山の片側が半分崩れた。
棒が傾いて踏みとどまった。
息を忘れて思わず深呼吸をしたのが何度あったろう。
次の大きな波で山はすっかり波に沈んで、返す波に棒が流れていった。
「波が棒を倒したから、海の負けよ。」みよちゃんは、いたずらっぽい目をしてそう言うと砂浜を駆けていった。

ある夏の夕暮れ、浜辺で出会った女の子との記憶。
なぜか刻々崩れる砂山の姿だけはいつまでも刻銘に憶えていたが、「みよちゃん」のことを思い出したのはつい最近のこと。

posted by はまべせいや at 04:19| Comment(0) | TrackBack(0) | 黒の部屋 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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