2010年01月18日

事務所を後にする前に

真っ白な壁が褐色に染まってゆく
やがて壁は下から剥がれ落ち
一つの角が形を失って傾いた
そしてもう一つの角がガクリと崩れた

スプーンをカップに沈めると
数回かき回してカップを口に運んだ
なぜ砂糖を入れるような
そんな気まぐれを起こしたのか
この摩天楼の事務所を閉める“ハレ”の日に飲む
最後の極上の一杯にわざわざ砂糖を入れたのか

すべては計算され尽していた
自明なはずだった
買収するたびに資産は増え配当は増え

なぜ砂糖を入れたのか
まったくの計算外

カップのコーヒーを今度は
たっぷりとゆっくりと口に含む
ここ数日決断するまでに芯のようにできた頭の塊が
穏やかにとけていった

ショックは一瞬にして世界を駆け巡った
こんなに強くこんなに速くとは
その原理を使っていたのは他ならないこの自分

底に角砂糖の残ったコーヒーを飲み干した
そして事務所を後にした

posted by はまべせいや at 04:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 疑問のウラガワ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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