2009年12月09日

放りっぱなしの荷物

トントンと扉を叩く音。そして「黒さん、紅蜘蛛便です。黒さん。」と声。えっ、紅蜘蛛便だって、そんなのぼくに来ることなんてあるのかな。そんなことを思いながら、のろのろと起き上がる。今度はドンドンと扉を叩く音。そして「黒さん。黒さんの部屋ですね。紅蜘蛛便です。」と少しトーンが上がった声。やっぱり間違いなさそうだなと思いながら「はい、今行きます。」と返事する。
扉を開けると紅蜘蛛便の配達手がB4判のコピー用紙の束ほどの荷物と受取書を持って立っていた。なるほど、包みには黒様とある。珍しいことがあるものだなと思いながら、受領書に判を押す。「ありがとうございました。」と配達手が言ったのと、あらためて見た受取人のおかしいことに気が付いたのは同時だった。「あっ、ちょっと待って。」とぼくが言ったときは、背中を向けて配達手は車に駆けていくところだった。「ぼくはあなたに荷物をお届けするまでが仕事です。後はあなたが届けてください。」配達手はそう言葉を残して、車に乗り込んでさっさと行ってしまった。
B4判のコピー用紙の束ほどとは言ったが、荷物すべてが紙というほどの重みではない。かといってやたら大きい箱に文庫本二冊というほどの重みでもない。つま先に落とせば思わず「痛っ」と声を洩らすだろうことは想像できる重み。ワレモノ注意とある。少し振ってみるが内部はきっちりと固定されているのか、均一なのか。カサリとも音はしない。
その荷物の受取人には大きく「黒様」とあり、その右下に小さく「気付Qくんへ」とある。Qくんとは誰なのか?ワレモノとはどういうワレモノか?開けることもままならず、行く当てのない荷物がずっと放りっぱなしになっている。

posted by はまべせいや at 04:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 黒の部屋 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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